CRAFTSMANSHIP M1のものづくり

テーパー嵌合のメリット

 

動力機構と変速機構において、「伝導効率の向上」は永遠の命題と言っても過言ではないでしょう。ただ回すのではなく、いかに効率良く回すか、それが問題です。

極端な例ですが、そもそも、モーターと被動作対象を直結することができれば、エネルギーの損失について考える必要は、ほとんどありません。ところが、駆動部分に与えられた空間や形状による制約、加えて、速度の変換や軸方向の変更といった必要性から、ほとんどの場合、どうしても途中にギヤやプーリーといった歯車や滑車を介在させざるを得ません。

1. 軸回転部品と歯車 / 滑車部品との接続

ところで、スピンドルやシャフトといった軸回転部品と、ギヤ / プーリーといった歯車 / 滑車部品とを接続する際、一般に、下図のようにストレートの内外径部品を接続させる場合(左)と、テーパー形状の雄雌を接続させる場合(右)とがあります。この接続部は双方の部品(軸と歯車)を一体化して製作することで省略することも可能です。しかし、部品の製作コストが高くつくだけでなく、部品が摩耗した場合も一体化された部品ごと交換しなければならず、メンテナンス上のコストも好ましくありません。

2. ストレート嵌合と
テーパー嵌合

一般に、要求精度が高ければ高いほど、テーパー嵌合が採用される傾向があります。ストレートの雄雌で嵌め合わせた上でクサビを差し込んで固定する方法もありますが、精度の面ではテーパー嵌合に及びません。

ストレート接続の場合、両部品が嵌め合うためのクリアランスが振れの要因となります。さらに、こうした軸部分の振れは、プーリーやギヤにとって最も重要であるプーリー溝や歯のかみ合わせ面において、より増幅された形で現れ、不必要な音や振動を発生させます。また高い嵌合精度で作られた遊びの少ないストレート接続は、双方の部品が食い付いて外れなくなる、いわゆる「カジリ」を生じてしまうことが多く、メンテナンス性の面でも最善であるとは言えません。

ところがテーパー嵌合の場合、しっかりした「ラージ当たり(大端合わせ)」が出ていて、かつ、テーパー基準で溝や歯が仕上げられていれば、不必要な音や振動の発生を激減させることができます。(大端合わせについてはテーパー合わせ加工のページをご覧ください)

またメンテナンス性についても、テーパー嵌合ではカジリの発生が大幅に低減できます。さらにプーリーや歯車が摩耗した際の交換後も、ストレート嵌合と比較して精度の復元が比較的容易である点も大きなメリットと言えるでしょう。

3. エムワン精工の
ソリューション

エムワン精工では、ストレート嵌め合い部品の回転から生じる音や振動に悩まされていたユーザー様の問題を、テーパー嵌め合いによって解決した事例を数え切れないほど経験しています。また当社では、フランジ、アーバー、ギヤ、プーリー、スピンドル、シャフト、といった大半の精密テーパー部品を、雄雌を問わず手がけており、そのうちフランジについては、ある大手工作機メーカーの特定の工作機械に取り付けられる砥石フランジの100%を当社から納入しています。言うまでもなく、工作機械にとってフランジの精度は、機械の品質を直接的に決定付けてしまうほど重要です。いわゆる市販の精密テーパーゲージを凌駕する当社のテーパー加工を、ぜひ精密部品の接続を必要とするお客様のソリューションとしてご検討ください。

参考写真:ハウジング(エムワン精工社内設備用部品)- 30φストレート部を案内としてテーパー部で相手に嵌め合い、ダブルで芯を出す高精度治具。

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